黒川温泉【持続可能な観光SDGsの日本の事例】

黒川温泉【持続可能な観光】地方創生の情報

アフターコロナの観光の在り方として、「持続可能な観光」が注目を浴びています。

観光分野における主導的な国際機関である国連世界観光機関(UNWTO)が、「持続可能な観光」を進めており、「持続可能な観光」を「訪問客、業界、環境及び訪問客を受け入れるコミュニティーのニーズに応えつつ、現在および将来の経済、社会、環境への影響を十分に考慮する観光」と定義しています。

さらに、「持続可能な観光」では以下のことが求められています。

1.主要な生態学的過程を維持し、自然遺産や生物多様性の保全を図りつつ、観光開発において鍵となる環境資源を最適な形で活用する。

2.訪問客を受け入れるコミュニティーの社会文化面での真正性を尊重し、コミュニティーの建築文化遺産や生きた文化遺産、さらには伝統的な価値観を守り、異文化理解や異文化に対する寛容性に資する。

3.訪問客を受け入れるコミュニティーが安定した雇用、収入獲得の機会、社会サービスを享受できるようにする等、全てのステークホルダーに公平な形で社会経済的な利益を分配し、貧困緩和に貢献しつつ、実行可能かつ長期的な経済運用を実施する。

このような「持続可能な観光」を積極的にすすめている温泉として熊本県阿蘇郡南小国町にある黒川温泉があげられます。

黒川温泉は、古くから労働者のための「憩いの場」として多くの人々に利用されてきました。

黒川温泉は福岡から車で約2時間半かかる山奥にポツンと存在する温泉観光地ですが、多くの観光客が足を運んでいます。

大型のホテルが立ち並ぶ温泉観光地とは違い、数多くの旅館が並んでおり、その旅館一つ一つに「露天風呂」がついています。

黒川温泉は持続可能な観光SDGsを積極的に推進しています。

以下では黒川温泉の持続可能な観光SDGsについて詳しく解説します。

なお、黒川温泉は最近「南小国町の奇跡」という本も出版しました。

黒川温泉一旅館

黒川温泉

黒川温泉は露天風呂と旅館、そして里山風景をすべてまとめて「黒川温泉一旅館」としています。

「黒川温泉一旅館」は、1994年に青年部により制定された活路開拓ビジョンであり、温泉街全体を一つの「宿」、すべての通り道は「廊下」、一軒一軒の旅館を温泉旅館全体の「客室」と捉え、統一感のある地域づくりを進めています。

たとえば、黒川温泉では、全体の統一感を考え、町全体の建物の屋根勾配は一定で、色は黒、壁はベージュ、サッシも黒か濃い茶色です。

さらに、2002年に「街づくり協定」が締結され、黒川温泉自治会が主体となり、24軒28の湯宿と100戸の地域住民よる景観形成のルールを作りました。

協定の基本理念は、ふるさとの自然と暮らしを守り、やさしさにあふれた黒川をめざし、「黒川らしさ」を守り、創り、育てることであり、このような理念はまさしく「持続可能な観光」と言えるでしょう。

黒川温泉では、このような「黒川らしさ」の理念の下で、あえて団体客の受け入れを避け、優良な個人客にターゲットを絞ってきました。

そもそも街のメイン通りは、小型車がやっと通れる程度の狭さで、大型バスは街には入れません。

また、環境保護の活動として、旅館で使用するシャンプー・石鹸類は河川の水質を守るため、水中の微生物により分解する天然素材を使用しています。

黒川温泉の入湯手形

黒川温泉の最大の特徴は「入湯手形」です。

入湯手形1枚で旅館内28か所の露天風呂のうち好きな露天風呂を3つ選んで入浴することができます。

この「入湯手形」が作られた背景は戦後温泉街をコンセプトにスタートしましたが、2軒露天風呂をどうしても作れない旅館がありました。

その2軒を救うために作られたのが「入湯手形」です。

「黒川温泉一旅館」と言われるように、1軒だけが儲かるのではなく地域全体で温泉郷を盛り上げようという思いから入湯手形が生まれたのだといいます。

黒川温泉のシェアリングエコノミー

黒川温泉では「シェアリングエコノミー」という言葉が浸透しており、全館で外履きや傘の貸し出しなどの統一が進められています。

これは、利用客が湯めぐりをして複数の温泉を楽しんだ際に、自分の外履きや傘が分からなくなったとしてもどれでも利用できるという意図で始めたそうです。

また、意匠の統一にも繋がり、温泉街全体の景観向上にも結びついています。

黒川温泉の湯あかり

「湯あかり」ライトアップは2012年の冬から始まりました。

球体状の「鞠灯篭」約300個と、筒状で高さ2mほどの「筒灯篭」を、自然の景観に溶け込むように配置して、日暮れから22時まで点灯します。

上記の動画を見てもらうとわかるのですが、もともとは放置竹林から地域の環境を守るため、竹の間伐・再生活動の一環として始まったイベントだそうです。

ただ竹を捨てるのではなく、再利用しているのです。

まさしく「持続可能な観光SDGs」ですね。

黒川温泉のサーキュラーエコノミー

サーキュラーエコノミーとは「廃棄を出さないビジネスモデル」のことで、製品の設計・デザインの段階から、「廃棄」というフェーズをなくし、代わりにすべての資源を使用し続ける仕組みを構築する「循環型経済モデル」のことをいいます。

黒川温泉は地熱や水、草原、森林、美しい景観などから自然の多くの恵みを得て成り立っています。

よって、貴重な地域資源を利用するだけでなく、最適な規模で循環させる仕組みを作り、環境負荷を軽減しながら経済を成り立たせるため、黒川温泉ではサーキュラーエコノミーを積極的に行っています。

以下では2つのプロジェクトをご紹介します。

  • 黒川温泉一体地域コンポスト(堆肥)プロジェクト
  • 南小国町産あか牛“つぐも”プロジェクト

黒川温泉一体地域コンポスト(堆肥)プロジェクト

黒川温泉一体地域コンポスト(堆肥)プロジェクトとは旅館から出てしまう生ごみをコンポストで堆肥にし、その堆肥を農家さんに使っていただき、そして農家さんが育てた農産物を今後は旅館で使っていただくというものです。

このような取り組みが国内でも評価され、「黒川温泉一体地域コンポストプロジェクト」の活動を紹介した上記の動画が、「2020伝えたい日本の”サステナブル”」にて、環境省環境経済課長賞を受賞しました。 

南小国町産あか牛“つぐも”プロジェクト

「南小国町産あか牛“つぐも”プロジェクト」というのは、南小国町であか牛を育ててお肉にし、旅館や飲食店でお客様へ提供するプロジェクトのことです。

“つぐも”は「継ぐ」と「牛(モー)」を意味する造語で、「南小国町産あか牛“つぐも”プロジェクト」は「景観」「農業」「観光」の3つの資源循環の継承に役立っています。

第一に、「景観」では阿蘇の広大な草原を示しており、阿蘇の草原はあか牛の牧草地となっています。

野焼きを終え、青々とした草原にあか牛を放つ。

そして秋が来て草は刈り取られ、冬には牛を人里へ戻す。

そして春先に再び野焼きを、というように阿蘇の草原では自然と赤牛と人々の営みが密接にかかわり、循環し続けています。

第二に、「農業」では主に堆肥のことを指しており、牛の糞を堆肥にし、田畑の土を豊かにしています。

その土が質の良い米や野菜を育て、人が食べない野菜のくずや稲葉は牛が食べ、またその糞が堆肥となります。

第三に、「観光」では旅人は、宿で地元産のあか牛を食べ、温泉で癒され、送り出し、また訪れてもらうという循環が作れます。

「人財」の育成:黒川塾

黒川温泉

黒川温泉では、持続可能な観光を実現するための3つめの項目「コミュニティーが安定した雇用、収入獲得の機会、社会サービスを享受できるようにする等、全てのステークホルダーに公平な形で社会経済的な利益を分配し、貧困緩和に貢献しつつ、実行可能かつ長期的な経済運用」を実現するため、「人財」に関する取り組みも積極的に行っています。

黒川温泉では、同じ年度に入社・入館する各旅館のスタッフを“同期”と捉え、黒川温泉の一員として迎える『黒川温泉 合同入社式』を行っています。

また、将来を担うリーダーに向けた「黒川塾」を開校し、そこでは黒川温泉の魅力の価値化、地域資源、キャリアデザインなどについて学び、旅館だけでなく地域を背負って立つ人材の育成を行っています。

まとめ

ここでは黒川温泉がどのような持続可能な観光SDGsを行っているのかを解説しました。

簡単にまとめますと、「黒川温泉一旅館」で温泉が一体となった自然に調和した景観づくりを行い、入湯手形やシェアリングエコノミーで地域全体で温泉郷を盛り上げ、湯あかり、「黒川温泉一体地域コンポスト(堆肥)プロジェクト」や「南小国町産あか牛“つぐも”プロジェクト」などで地域資源の活用・循環を推進するなど、様々な方法で持続可能な観光SDGsを推進しています。

もっと詳しく知りたい方は以下の本を参考に。

このような黒川温泉に泊まりにいってみましょう。

いろいろなアイディアがもらえるかもしれません。

城崎温泉も素晴らしい試みを行っています。

兵庫県の城崎温泉が成功した理由も一読ください。

参考文献

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